まずは、埼玉県所沢市にある宝塔山多聞院(たもんいん)です。紅葉と、500本の牡丹が美しく咲くお寺としても知られています。
多聞とは、仏教における四天王の一人、多聞天(たもんてん)に由来します。この多聞天とは、すなわち毘沙門天のこと。毘沙門天は戦いの神様であることから、戦国武将・武田信玄は、戦いに臨む際、兜の中に毘沙門天の像を納めていたそうです。
そして、この毘沙門天のお使いの神獣が"虎"です。
いにしえの昔、かの聖徳太子が先勝祈願したところ、毘沙門天が寅の年、寅の月、寅の刻に現れて、秘宝を授けて勝利に導いたとの言い伝えがあります。これにちなみ、毘沙門天のお使いは虎。双方とも強さの象徴ですね。ちなみに前述した武田信玄も、"甲斐の虎"と呼ばれていました。
そうした由来から、多聞院には虎にちなんだ見どころがいくつかあります。
まずは、毘沙門天を祀る境内の毘沙門堂。その前には、一対の狛犬...と思いきや、実は"虎"の石像です。
狛犬よりもしなやかでシャープな姿は、まさに"ネコ科"の虎ならでは!
神社ではとても珍しい石像ですが、毘沙門天を祀る京都の鞍馬寺や、奈良の朝護孫子寺も、狛犬ならぬ"狛虎"が鎮座しています。
毘沙門堂に安置されているのは、本尊の毘沙門天。しかし普段は、その姿を直接拝めません。しかし、12年に1度、寅年の5月1日に行われる「寅まつり」の日のみ、ご開帳となります。そう、2022年こそレアなご開帳年というわけです!
その他、境内には牡丹の花や笠地蔵など、もの静かな雰囲気にふさわしい見どころがありますが、その中で賑やかな一画があります。それが「身代わり寅」の奉納場所です。これは、毘沙門天の使いである虎が、奉納する方に降りかかる災厄を"身代わり"として引き受けてくれるというもの。願いを託す絵馬と同じく、家に持ち帰らずに"納め処"に奉納します。
黄色くて愛嬌があり、それぞれ微妙に表情が異なっている点にもぜひご注目ください。寅年のお参りに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。アクセスは、西武新宿線の航空公園駅東口から「ところバス」北路線(富岡循環コース)を利用し「多聞院通り西」で下車して徒歩5分です。